戦国の時代から、今も受け継がれる「松風」
1421年創業、京都・亀屋陸奥に伝わる「松風」。
その歴史は古く、石山本願寺と織田信長が戦った石山合戦の時代にまでさかのぼります。
長きにわたる籠城の中で、兵糧として考案されたと伝えられているのが、この「松風」です。
戦国の世に生まれた一つの菓子が、時代を越え、今も京都で作り続けられています。
亀屋陸奥に伝わる「松風」
松風は、小麦粉を主原料に、砂糖や麦芽飴、白味噌などを合わせて焼き上げた、亀屋陸奥を代表する和菓子です。
表面にはケシの実をあしらい、噛むともっちりとした独特の食感があります。
素朴でありながら、砂糖の甘みと白味噌の風味が重なり、どこか懐かしさを感じさせる味わいです。
そして、この松風には、600年以上にわたる長い歴史があります。
織田信長との戦いの中で、兵糧として生まれた「松風」

戦国時代、石山本願寺と織田信長の間で繰り広げられた「石山合戦」。長期にわたる籠城を支える兵糧として、当家三代目・大塚治右衛門春近が考案したと伝えられているのが「松風」です。
厳しい戦いを支える食べ物として生まれた松風は、やがて菓子として受け継がれ、600年以上の時を経た今も、京都・亀屋陸奥で作り続けられています。
「松風」の由来

「松風」という名前は、石山合戦の後、顕如上人が詠まれた歌に由来すると伝えられています。
「わすれては 波のおとかとおもうなり まくらにちかき庭の松風」
戦いの日々を離れ、京都で過ごした顕如上人が、庭の松を渡る風の音に、かつての石山本願寺での記憶を重ねて詠まれた歌です。
この歌から「松風」の銘を賜り、今日までその名が受け継がれています。
司馬遼太郎と「松風」

司馬遼太郎の小説『燃えよ剣』にも、「松風」が登場します。
物語の中で、鳥羽・伏見の戦いに敗れた土方歳三は、江戸へ戻る途中、大坂の料亭「西昭庵」に立ち寄ります。
そこで、連れのお雪が土方にすすめた菓子が「松風」です。
戦国時代に生まれたと伝えられる松風が、幕末を描いた物語の中で、土方歳三の前に菓子として登場する。
時代を越えて人々に親しまれてきた松風は、司馬遼太郎の物語の中にも、その名を残しています。
600年の歴史を、次の時代へ

戦国時代に生まれたと伝えられ、600年以上にわたって受け継がれてきた「松風」。その味と伝統を大切に守りながら、今も京都・亀屋陸奥で一枚一枚作っています。
先人たちが守り伝えてきたこの味を、私たちも大切に受け継ぎ、次の時代、そのまた次の時代へとつないでいきます。
600年以上の時を越えてきた一枚を、ぜひお楽しみください。
